はじめに
新人看護師や医療従事者の皆さん、COPDという疾患名を聞いたことはありますか?「タバコを吸う人がなる肺の病気」というイメージを持っている方も多いかもしれません。COPDは喘息と混同されることがありますが、両者は病態も治療も大きく異なります。本記事では、COPDの基礎知識から看護の実践ポイントまでわかりやすく解説します。
COPDとは
COPD(慢性閉塞性肺疾患:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、慢性的な気流閉塞を特徴とする肺疾患です。
- 肺気腫と慢性気管支炎という2つの病態が組み合わさっています
- 気流閉塞は不可逆的(元に戻らない)であることが喘息との大きな違いです
- 喘息は気流閉塞が可逆的で、治療により改善しますが、COPDは進行性で不可逆です
- 日本での患者数は500万人以上ともいわれ、見逃されやすい疾患です
原因
- 喫煙:最大の危険因子。COPD患者の90%以上が喫煙者または元喫煙者です
- 職業性粉塵・化学物質:炭鉱・建設業・農業などでの長期曝露
- 大気汚染:PM2.5・NOxなどへの慢性的な曝露
- α1アンチトリプシン欠乏症:遺伝的要因によりプロテアーゼの過剰活性が起きる(非喫煙者にも発症)
病態のしくみ
肺気腫
タバコの煙などにより肺胞壁が破壊され、ガス交換面積が低下します。肺胞の弾性が失われるため、息を吐き出す力(弾性収縮力)が低下し、空気が肺に残ってしまいます(過膨張)。
慢性気管支炎
気道に慢性的な炎症が起き、粘液分泌が過剰になります。「2年以上、1年のうち3ヶ月以上の慢性咳嗽・喀痰」という定義があります。
気流閉塞のメカニズム
肺胞壁破壊+気道炎症+粘液閉塞により、息を吐き出しにくくなります(呼気性気流閉塞)。
主な症状
- 労作時呼吸困難:初期は階段や坂道で息切れを感じる。進行すると安静時にも出現
- 慢性咳嗽・喀痰:長年にわたる「たばこ咳」が典型的
- 樽状胸郭(barrel chest):肺の過膨張により胸郭が前後径拡大し樽型になる
- 口すぼめ呼吸:気道内圧を高めて気道虚脱を防ぐための代償呼吸
- 進行例ではチアノーゼ・浮腫(肺性心)も出現
重症度分類(GOLD分類)
COPDの重症度はGOLD分類(FEV1:1秒量の%予測値)で評価します。
| Grade | FEV1%pred | 症状 |
|---|---|---|
| GOLD1(軽症) | ≥80% | 症状軽微・気づかれにくい |
| GOLD2(中等症) | 50〜79% | 労作時呼吸困難が出現 |
| GOLD3(重症) | 30〜49% | 日常生活に支障をきたす |
| GOLD4(最重症) | <30% | 安静時も呼吸困難・入院リスク高 |
急性増悪
COPDにおける急性増悪は、症状が急激に悪化し、通常の治療変更が必要となる状態です。繰り返すことで肺機能が段階的に低下します。
- 主な誘因:気道感染(ウイルス・細菌)・大気汚染・季節変化
- 症状:呼吸困難の増悪・痰の増加・痰の変色(黄色・緑色)
- 注意:増悪を繰り返すごとに肺機能の低下が加速し、予後が悪化します
看護師として押さえておきたいポイント
- 観察:SpO2・呼吸数・呼吸困難の程度(修正MRC息切れスケール)を定期的に評価する
- 呼吸リハビリ:口すぼめ呼吸・腹式呼吸の指導を行い、呼吸効率を改善する
- CO2ナルコーシスに注意:COPD患者は低酸素を換気ドライブとして使用している場合があり、高濃度酸素投与でCO2貯留・意識障害が起きることがある。SpO2目標は88〜92%
- 禁煙支援:COPDの進行を遅らせる最も有効な介入。禁煙補助薬の活用も促す
- 栄養管理:COPD患者は呼吸に多くのエネルギーを消費し、体重減少・筋力低下が起きやすい。栄養状態の評価が重要
- ワクチン:インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種推奨を伝える
まとめ
- COPDは喫煙を主因とする慢性的・不可逆的な気流閉塞疾患である
- 肺気腫と慢性気管支炎の2つの病態からなる
- 喘息との違いは「不可逆性」であることが重要
- GOLD分類でFEV1により重症度を評価する
- 急性増悪を繰り返すと肺機能が低下するため予防が重要
- 禁煙が最も重要な治療介入であり、看護師の役割は大きい
- 高濃度酸素投与によるCO2ナルコーシスに注意する
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