はじめに
急性気管支炎の患者さんから「薬をもらえなかった」「抗菌薬を出してほしい」という声を聞くことがあります。実は急性気管支炎の90%以上はウイルス性で、抗菌薬は原則不要です。本記事では、急性気管支炎の治療薬について、対症療法の薬や抗菌薬が必要なケースを含め解説します。
治療の基本
- 多くは対症療法のみ:症状を和らげることが治療の目的
- 抗菌薬は原則不要:ウイルスには抗菌薬が効かないため、ほとんどの場合は不要
- 自然軽快を待つ:適切な休養・水分補給・対症療法で2〜3週間以内に改善することがほとんど
対症療法の薬
| 種類 | 薬品名 | 商品名 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン | カロナール | 発熱・のどの痛み緩和 |
| 鎮咳薬 | コデインリン酸塩 | コデイン | 咳を抑える(強め・12歳未満禁忌) |
| 鎮咳薬 | デキストロメトルファン | メジコン | 咳を抑える(マイルド) |
| 去痰薬 | カルボシステイン | ムコダイン | 痰を出しやすくする |
| 去痰薬 | アンブロキソール | ムコソルバン | 痰を出しやすくする |
| 気管支拡張薬 | ツロブテロール | ホクナリンテープ | 気道を広げる(貼付剤) |
抗菌薬が必要なケース
以下の場合には抗菌薬の投与を検討します。
- 百日咳が疑われる場合:激しい咳発作・「ウープ」という吸気性笛声音がある場合。
→ マクロライド系(アジスロマイシン・クラリスロマイシン) - マイコプラズマ感染が疑われる場合:若年者・長引く乾性咳嗽・X線で浸潤影がある場合。
→ マクロライド系またはテトラサイクリン系(ドキシサイクリン) - 明らかな細菌感染の証拠がある場合:高熱持続・膿性痰・CRP著明上昇・白血球増加などが目安
- 免疫低下者・高齢者・重症例:細菌性感染を早期から疑うことも
「抗菌薬はいらないの?」患者への説明ポイント
- 原因の説明:「ウイルスが原因の場合、抗菌薬はウイルスには効きません」
- 耐性菌のリスク:「不必要な抗菌薬の使用は、効かない耐性菌を生む原因になります」
- 自然経過の説明:「多くの場合、2〜3週間で自然に良くなります。咳は少し長引くことがあります」
- 再受診の目安:「熱が高くなる・息苦しくなる・症状が改善しない場合は再受診してください」
看護師として押さえておきたいポイント
- 「薬をもらえなかった」という不満への対応:患者が不満を持つことがある。「抗菌薬がないと治療していない」という誤解を解く丁寧な説明が必要。医師の説明を補足する形でサポートする
- 悪化サインの説明と確認:SpO2低下・高熱持続(3日以上38.5度以上)・呼吸困難・食事がとれない状態は要受診のサインであることを伝える
- 水分補給の指導:十分な水分摂取(1日1.5〜2リットル目安)で痰が出やすくなる
- 安静・感染対策の指導:手洗い・咳エチケット(マスク着用)を指導する
- インフルエンザ・COVID-19の確認:ウイルス検査が未実施の場合は確認を促す(抗ウイルス薬が有効なケースがある)
まとめ
- 急性気管支炎の90%以上はウイルス性で、抗菌薬は原則不要
- 対症療法(解熱薬・鎮咳薬・去痰薬)で症状を和らげることが治療の基本
- 百日咳・マイコプラズマの場合はマクロライド系抗菌薬が有効
- 患者への「抗菌薬不要」の説明は根拠を持って丁寧に行う
- 悪化サインを事前に説明し、症状が悪化した場合の再受診を促す
- 抗菌薬の適正使用(AMR対策)は看護師も意識すべき重要なテーマ
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